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増えています前立腺癌 ~PSAで早期発見~

掲載月:2003/09

ひょうご経済戦略 2003年9月号


財団法人兵庫県健康財団 保健検診センター 杉村千惠

 

(1) 悪性腫瘍は増加の一途
 日本人の三大死因はいわゆる癌といわれる悪性腫瘍、心筋梗塞をはじめとする心臓疾患そして脳梗塞、脳出血のような脳血管障害です。特に悪性腫瘍は増加の一途をたどっており、1980年代から1位となっています。それではどの癌が多いのでしょう。男性でみてみると、以前は群を抜いて胃癌が多かったのですが、徐々に減少し、現在は肺癌、胃癌、肝・胆管癌、大腸癌、膵臓癌、そして前立腺癌の順です。

 

(2) 急速に増えている前立腺癌
 それでは前立腺癌はそれ程多くないのでしょうか。アメリカ人の統計では男性の5人に1人が罹患するとされており、罹患率は肺癌の2.5倍、大腸癌の3.5倍にも達します。日本人の場合はこれほど多くはありませんが、生活の欧米化に伴って急速に増加しています。多くの人が前立腺癌に罹りますが、前立腺癌で死亡する率はそれ程高くなく、癌の中でも治りやすいことを反映しています。癌の治りやすさの指標として5年後に何%生存しているかという、5年生存率があります。進行した癌も含めて、前立腺癌はこの5年生存率が約90%と最も良好です。特に早期といわれる前立腺癌は非常に良好な経過をたどります。

 

 他の癌と同様、前立腺癌も早期に見つけることによって完治させることが出来るのですが、これには検診が大きな役割を占めます。癌の診断には癌があると増加する腫瘍マーカーを使います。腫瘍マーカーは癌があると高くなることが多いですが、癌でなくても高くなることも多いのです。一方、癌があっても高くならないことも多いため、幾つかの腫瘍マーカーを組み合わせて癌を見つける努力をしています。

 

(3) 腫瘍マーカーで発見
 前立腺癌には前立腺特異抗原(PSA)といって、前立腺疾患の時に特異的に高くなるマーカーがあります。これは血液検査で調べることが出来るため、検診にはもってこいの腫瘍マーカーです。前立腺癌で高くなるのですが、前立腺肥大症や前立腺炎でも、癌ほどではありませんが少し高くなるのです。少し高いからといってすぐ癌というわけではありませんので、無用な心配はいりません。ただし、PSAが高めの場合や検診毎に上昇していく場合には精密検査が必要です。

 

(4) 精密検査と治療
 精密検査では、前立腺が直腸のすぐ前にあることを利用して、泌尿器科医が直腸指診という触診をして、前立腺の大きさや硬さなどを調べます。これに加えて、超音波検査を行い、肥大の程度や腫瘤の存在を検査します。これらの検査で癌の疑いが高い場合は、細い針を前立腺に刺して、前立腺から直接組織をとって組織の病理検査をします。この検査で癌が検出された場合は、MRIやCTといった画像診断を行い、癌の進行具合を調べて治療法を決めます。


 治療については、様々な方法があります。腫瘍が小さくて癌が前立腺にとどまっている場合、前立腺から外へ出ている場合、転移している場合で治療法が異なります。癌が前立腺に限局している場合は手術や放射線治療が、前立腺から外へ出ている場合は放射線治療やホルモンをはじめとする薬物治療が、転移がある場合は薬物治療が基本になります。ただし、ひとつの治療だけが行われるのではなく、これらの治療が組み合わされて複合的に行われることが多くなります。

 

 また、兵庫県では粒子線治療という放射線治療が今年4月から開始されており、前立腺癌に対して高い効果があるためその利用が期待されています。


 なお、前立腺癌は癌の中でも特に高齢者に多く生じます。これに加えて進行が遅い癌が多いので、なかなか大きくならないことも稀ではありません。このため高齢者の場合は、何もしないで経過を慎重に見ていくという選択もあります。


 前立腺癌は欧米人に多い疾患でしたが、日本でも急速に増えています。ただし早く治療をすると完治する可能性が非常に高い癌です。またPSAという優れた腫瘍マーカーがあり、検査法も進んでいます。定期的な検診を受けて、前立腺癌を克服しましょう。

 

 

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