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労働時間を短く

掲載月:2004/01

ひょうご経済戦略 2004年1月号


財団法人兵庫県健康財団 保健検診センター 所長
労働衛生コンサルタント 伊藤 一夫

 

 昨年11月11日の神戸新聞は、「働き過ぎが原因で過労死したり、死亡には至らないが脳・心臓疾患になり、後遺症があったりして、2003年度上半期に労災認定を受けた人が136人と、過去最多だった前年同期の115人を大きく上回った」と報じています。

 

 これは、平成13年12月、脳・心臓疾患に対する労災認定の基準が改正され、認定要件にこれまでの「発症直前から前日までの異常な出来事」と「短期間の過重業務」に加えて、「発症前おおむね6ヶ月にわたる長期間の疲労の蓄積」が追加されたことによるものです。


 そのため、平成14年度の認定件数は、平成13年度の143件に比して、317件と2.2倍に増加していました。今年度の上半期ベースではさらに増加しているわけです。

 

 さらに平成14年2月には、「過重労働による健康障害防止のための総合対策」が策定されました。この対策での事業者が講ずべき措置としては、


(1)月45時間を超える時間外労働者については、産業医の助言指導を受けることや、
(2)月100時間または2ヶ月間ないし6ヶ月間の月平均80時間を超える時間外労働者については、産業医との面接や必要に応じての健康診断を行うこと等がわりとよく知られていますが、一番大切なことは、長時間労働をさせないことです。時間外労働は本来臨時的な場合に行わせるものなのです。そして、やむを得ずに時間外労働をさせるにしても、月45時間以下とするよう努めるとされています。

 

 それでは、なぜ長時間労働は悪いのでしょうか?


 長時間労働と脳・心臓疾患との関係については、業務内容・作業環境・勤務形態等様々な要素が関連しており、まだ充分に解明はされていませんが、労働時間が長い程その発生が多くなるという報告が多くみられます。

 

 特に睡眠時間との関係については、睡眠時間が4時間以下の場合、7~7.9時間の場合に比べて冠動脈性心疾患による死亡率が2倍になるとか、1日7~8時間の群が6時間以下及び9時間以上の群に比べて、死亡率が低い等の報告があります。最近はもう少し短くてもよいという発表も見られますが、1日4~5時間以下の睡眠では、脳・心臓疾患の死亡率が高くなることが明らかになりつつあります。

 

 そして、一般的には、残業時間が月80~100時間を超えますと、睡眠時間を5~6時間確保することが困難になります。睡眠時間を7~8時間確保しようとすれば、残業時間を月45時間以下に抑える必要があります。


 更に、もう一つの問題として、賃金不払残業(一般に言うサービス残業です)があります。これにより、働く人の実際の残業時間が評価しづらくなっており、健康管理にも支障をきたしております。もし、こうした状況で、過重労働による業務上の疾病が発生すれば、事業者が安全配慮義務違反に問われることは明らかで、「総合対策」でも司法処分を含めて厳正に対処するとなっています。

 

 また、脳・心臓疾患は、一方では長時間労働の影響を強く受ける「作業関連疾患」ですが、もう一方「生活習慣病」としての側面もあります。ですから、生活習慣の改善で予防できる可能性もあり、それができればすばらしいのですが、長時間労働者にはその余裕のない方も多くおられます。職場では上司から怒られ、保健室では保健スタッフからしぼられでは、逃げ場がなくなります。


 長時間労働を減らすことが、最善の解決策なのですが、それができない時は、早くから薬の助けを借りることも一つの逃げ道です。とにかくまわりに助けをたくさん作り、労働時間を短くし、健康を確保することが求められています。

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