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治るがんが見つかっているのに、検診休止?

掲載月:2004/03

ひょうご経済戦略 2004年3月号


財団法人 兵庫県健康財団 保健検診センター 所長
労働衛生コンサルタント 伊藤 一夫

 

「神経芽細胞腫」検診の休止
 毎年約200名のがんが発見され、その90%以上の方が長期生存している検診が、休止されることになりました。(兵庫県では昨年11月1日より休止)何故だと思われますか?

 

 この検診は、小児がんの一種である「神経芽細胞腫」の検診です。神経芽細胞腫は、1歳未満で発見されると予後は比較的良好ですが、1歳以降で発見されると、治療が困難で、死亡に至る例が多いことが、従来から知られていました。そこで、昭和59年に全国的にこの神経芽細胞腫を生後6ヶ月に尿を検査することで、早期に発見する検診が始まりました。平成15年までは、毎年国が3億円、都道府県が6億円の経費を負担していました。

 

【過剰診断?】
 それなのに何故休止になったのでしょうか?


 検診の評価には、(1) 死亡率減少効果があるか、(2) 検診による不利益はないか、が最も重要です。


 ドイツとカナダで行われた根拠の質が高いとされる2つの介入研究で、死亡率減少について否定的な結果が報告されました。我が国の検診の評価に関する研究は12件あり、4件では統計的に有意な死亡率減少効果があったとしていますが、介入研究よりは根拠の質の劣る研究でした。また、この検診で発見された神経芽細胞腫には、積極的な治療を行わなくても自然退縮する場合があることが観察されています。

 

 この検診が始まってから、神経芽細胞腫の罹患率(病気にかかる割合)が2倍になったのですが、この増加は検診がなければ特段の対応が必要とならなかった方々で、「過剰診断」であると考えられたのです。また、治療による合併症として、手術により8例、化学療法により10例の死亡が報告されています。

 

【休止の理由は】
 そこで、平成15年7月30日、厚生労働省の「神経芽細胞腫マススクリーニング検査のあり方に関する検討会」は、報告書で現行の生後6ヶ月時に実施する神経芽細胞腫検査事業は、死亡率減少効果が明らかでなく、また、不利益も生じている、として事業の休止を求めました。そして、今後


(1) 神経芽細胞腫の罹患と死亡の正確な把握、
(2) 検診の実施時期変更など新たな検査法の検討評価、
(3) 臨床診断と治療の向上を必要とし、新たな検診を導入する際には、有効性の評価を事前に充分に尽くす必要があるとしています。


 つまり、この検診で見つかったがんには、本来放置しておいてもよかったがんが多く含まれ、1歳以降の死亡につながるようながんはあまり見つけることができていない、ということです。

 

【がん検診の目的】
 がん検診は、単に治るがんを見つけることが目的ではなくて、死亡につながるがんを治る時期に見つけることが必要なのです。そして、それをきちんと評価するためには、介入研究が必要となります。しかし、この介入研究には時間と費用がかかり、日本ではなかなか実現していません。
今、普及し始めているヘリカルCTによる肺がん検診でも、早期の治るがんが多数見つかり始めていますが、8年間で24億円という、死亡率減少効果の有無を調べるための研究プランは実現せず、1000万円程度のレベルの研究となりました。

 

【有効ながん検診】
 日本には、死亡率減少効果の証明がなされる前に、普及してしまった検診が多くあります。そして後から有効性が証明されないとして、中止になりそうな検診がまだいくつかあります。事前に充分な費用と時間をかけて、有効性を評価することこそ重要だと思われます。

 

 なお、現在公的に行われているほとんどのがん検診は、有効性が評価されておりますので、安心して受診していただきたいと思います。念のために...。

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