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X線検査を受けるとがんになるの?

掲載月:2005/01

ひょうご経済戦略 2005年1月号


財団法人兵庫県健康財団保健検診センター所長 伊藤 一夫
(日本医学放射線学会認定放射線科専門医)

 

X線による健康影響とは?
 2004年2月10日、読売新聞は「診断被ばくで、がんが3.2%増加」と報じました。
X線による健康影響には、当人に現れる身体的影響と子孫に現れる遺伝的影響があります。身体的影響には、白血球減少等の早期影響と、発がんや胎児への影響等の晩発影響があります。早期影響や胎児への影響は確定的影響と言い、ある線量を超えないと現れません。一方、遺伝的影響や発がんは、放射線量に比例して出現頻度が高くなり、確率的影響と言われます。

 

惑わされず科学的根拠で対処を
 遺伝的影響が心配された時代もありましたが、広島・長崎の被爆二世の調査では、放射線によって遺伝的影響が生じたという科学的根拠は得られませんでした。広島や長崎での線量程度(平均400ミリシーベルト)では、有意な遺伝的影響はあらわれなかったということで、人は当初の予測よりは遺伝的影響を受けにくいようです。

 

 また、妊娠中にX線検査を受けた時、中絶するかどうかが議論になったこともありました。しかし、国際放射線防護委員会の「妊娠と医療放射線」(1999.11)では、「100ミリグレイ以下の胎児線量では、妊娠中絶する医学的正当性はない」としています。X線検査時の胎児線量は、母体の胸部検査で0.01ミリグレイ、胃透視では1.1~5.8ミリグレイで、通常の検査では100ミリグレイを超えることはありません。そして、子供が奇形を持つ確率は被曝がなくても3%で、100ミリグレイの被曝でもほぼ3%です。まだまだ医療被曝に過敏に反応する医療従事者がいることも確かです。正確な科学的根拠に基づいて対処したいものです。また、妊娠可能な女性のX線検査は、生理開始後10日以内に行うべきという規則は、科学的に証明されていないとしています。

 

X線検査のリスクとベネフィット
 今、医療被曝で重要な問題は発がんです。そして、その影響は集団で初めて観察されるものです。医療被曝は、検査の種類によりその量や被曝部位にかなりばらつきがあります。発がんの頻度は、通常のX線検査では大雑把に言うと「その検査を10万人の方が受けた場合、数人の方に余分のがんが発生する」といった程度です。

 

 そこで、X線を使ったがん検診では、検査を行ったことにより余分に発生するがん(リスク)と検診により救命できる人数(ベネフィット)とを比較して検討します。がんは、一般に高齢になるほど発生頻度が高くなりますので、ある年齢以上だと受診した場合のベネフィットの方が大きくなります。

 

 胃がん検診では、1977年当時はこの年齢が30歳代半ばとされていましたが、装置の改良により、最近では20歳代前半とされています。X線を使った乳がん検診(マンモグラフィ)では30歳とされています。肺がんのヘリカルCTでは、まだ研究中ですが、通常の医療で使用されるCT検査の数分の1の線量で撮影し、救命できる肺がんを多く発見しています。そして欧米でもCT検診が始まっています。

 

3.2%の数値が意味するところ
 個人として考えると、通常は検査によって病気が見つかり治療に結びつく利益の方が発がん率の上昇によるリスクを上回ると考えられます。しかし、がんが心配だからといって、同じ検査を短期間に何度もお受けになるのは考えものです。
 一方、医療の供給側もX線以外の検査法(超音波やMRI等)で済ませられないか等被曝を少なくすることが求められています。

 

 なお、冒頭の3.2%という数字は、一つの仮定の上に立って計算された数値で、日本のがんの内の3.2%がX線診断による被曝が原因だろうということです。これは、X線診断を受けたら3.2%ががんになると言っている訳ではなくて、X線検査を受けないほうがいいと言っている訳でもありません。

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