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たばこをやめた人の方が早く死ぬ?

掲載月:2005/03

ひょうご経済戦略 2005年3月号


財団法人兵庫県健康財団 保健検診センター所長 伊藤 一夫

 

 たばこが肺がんをはじめとする各種のがんや肺気腫、慢性気管支炎等の慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心筋梗塞や狭心症等の虚血性心疾患の原因であることは、よく知られています。そこで、私は講演会で以下のような話をします。

 

 ある病院で、肺や気管支等の病気を診療する呼吸器科の医師が呼吸器疾患で治療を受けているのに、たばこをすい続けておられる患者さんに対して「あなたの病気はたばこが原因です。たばこをやめなければ、病気は良くなりませんよ。」と説得します。そしてある時、たばこをやめた人と、すい続けた人とどちらが長生きしているかなと調査をします。

 

 ここで講演会に参加している方々にお聞きします。「さてみなさん、どちらの人が長生きしていると思われますか」と。「やめた人。」と答えられる方も多くおられます。しかし「正解は、たばこをすい続けた人が長生きします。」というお話です。

 

 これはつくり話ですけれど、何故たばこをすい続けた人の方が長生きしたか、おわかりでしょうか。たばこが原因で呼吸器病になって病院にかかっているのに、たばこをすい続けている人というのはたばこへの依存度の非常に高い人です。そういう人は、医師の説得程度ではなかなかたばこはやめられません。

 

 ニコチン依存症で、ニコチンによって、たばこをすわざるを得ない身体、精神状態にさせられているのです。そういう人がたばこをやめるというのは、病気が進行してしまってたばこをすえなくなった時です。ですから、こういう人々を調査しますとたばこをすい続けている人の方が長生きするという結果がでてくる可能性があるのです。

 

 いろんな調査結果、統計結果がありますが、調査する対象をまちがえると逆の結果になってしまうのです。たばこをすい続けた人とやめた人と、どちらが長生きするかを調べるのであれば、健康な人を対象としなければいけません。

 

 最近、健康食品等に関するテレビ番組をみていますと、アンケートにお答え下さった方々の統計結果から、その商品が良かったという方が高率おられました、というようなことが言われています。アンケートにお答え下さった方とはどんな方でしょうか。その商品に関心のある方や、効果があると思った方々でしょう。その商品に関心がなかったり、効果がなかったと思った方々は、アンケートに回答しません。この集計では、良かったという方が高率になってあたりまえなのです。

 

 統計では調査対象の選定が大変重要なのです。統計結果を評価される時には、その対象は何かをチェックしてください。対象の年令は、性別は、居住地域は、特性はと。これらが明らかにされていない統計もたくさんあります。

 

 ここで、最初のたばこの話にもどりますが、最近は様子が少し変わってきています。以前に比べて、禁煙しやすい環境になってきています。健康増進法の施行や職場における喫煙対策のためのガイドラインの改正でたばこのすえる場所が少なくなっています。

 

 禁煙補助薬としてニコチンガムやニコチンパッチが登場し、手に入れやすくなりました。禁煙セミナーや禁煙外来も各地にあり、禁煙サポート体制が整ってきました。日本呼吸器学会や日本循環器学会、日本肺がん学会等9学会は「喫煙は個人の趣味・嗜好の問題ではなく、積極的に禁煙治療を行うべき疾患である」として「禁煙ガイドライン」を発表しました。トミーズ雅さんおすすめの「禁煙セラピー」がベストセラーになっています。

 

 生命にかかわるような事態になる前に、たばこをやめられるような環境は整っています。

 

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