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乳がん検診

掲載月:2006/09

ひょうご経済戦略 2006年9月号


財団法人兵庫県健康財団 保健検診センター副所長 杉村 千惠

 

 乳がんで亡くなる方が増え続けています。平成16年度にはとうとう1万人を超え、10,524人の方が亡くなられました。この数は昭和50年の3,262人の3.2倍強になっています。30歳代から60歳代までのすべての年齢層で部位別の癌死亡数の第1位となっており、死亡数のピークは55~59歳代です。そしてそれ以上に乳がんにかかる方(罹患率)が増えており、年間36,000人以上の方が乳がんと診断されています。すべての年齢層で増えていますが、特に40歳代など若い年齢層での罹患率が増えています。

 

 乳がんにかからないようにすることはできるでしょうか。他の多くの癌と同じように乳がんも原因のわかっている部分は限られています。ただ、乳癌になりやすい要因(リスク)はわかってきています。


1)40歳以上
2)出産経験がない、初産が30歳以上
3)初潮が早かった、閉経が55歳以上
4)本人、家族が乳癌にかかった人
5)肥満
6)食事(動物性脂肪食、アルコール)


などで、リスクが高いと言われています。

 

 しかし、これらのリスクに当てはまるものがあるとしても自分の努力で改善できるものは肥満や食事のみです。このように乳がんにかからないようにするという1次予防はほとんど不可能なのです。そこで、2次予防、早期発見が重要になってきます。

 

 欧米は乳癌先進国です。女性の癌死亡のうち、約3分の1から半分が乳癌によるものです。日本に比べて、罹患率も高く、アメリカでは7.5人に1人の方が乳癌にかかるといわれています。そのため、欧米では日本よりも早くから、乳癌対策の必要性が注目され、国を挙げて取り組みました。その結果、罹患率を低下させることはできませんでしたが、死亡率を低下させることができたのです。死亡率が下がった大きな要因は、マンモグラフィ検診を普及させ、早期発見、早期治療に努めたからです。

 

 マンモグラフィとは乳房を透明な板ではさんでレントゲン写真をとる検査です。乳房を薄く引き延ばして撮影することにより、乳房内にできた小さな腫瘤や微細な石灰化を発見することができます。視触診ではわからない小さな癌を見つけることができるため、癌の発見率が高くなります。また小さな癌が多く見つかるので早期癌の割合が多くなり、治癒率が上がります。

 

 そして10年生存率が上がり、乳がんで死亡される方が減少するのです。マンモグラフィ検診先進国である欧米では、マンモグラフィ検診を普及させることで 乳がんの罹患率は毎年上昇していますが、死亡率を低下させることに成功しているのです。

 

 日本では従来乳がん検診としては視触診のみが行われてきましたが、旧厚生省が平成10年に視触診のみの乳がん検診は検診の有効性に疑問があるとし、平成12年に50歳以上では乳がん検診にマンモグラフィを併用するようにと通達を出しました。

 

 しかし罹患率の高い40歳代は視触診のみのままでしたが、平成16年度に新たな通達が出されました。2年に1回、40歳代は2方向のマンモグラフィと視触診、50歳以上は1方向のマンモグラフィと視触診を行うというものです。

 

 このように、今の日本は乳がん検診の体制が整いつつあるというのが現状です。欧米のように死亡率を減少させる効果はまだ全く上がっていません。それはなぜでしょうか。それは受診率の違いです。米国では国を挙げて啓蒙に努め、50歳以上の検診受診率が70%以上です。しかし、日本では数%です。どんなに有効な検診でも、受ける方がいなければがんは見つかりません。たくさんの方が検診を受けてはじめて効果が表れるのです。

 

 乳がんは癌の中では比較的治りやすい癌です。早期に見つけると90%以上の方が治ります。また、小さなうちに見つけると乳房温存療法など侵襲の低い治療法を選べる方が増えます。乳房が残せるだけでなく、リンパ節の切除なども不要の方が増え、術後の生活の質(QOL)が違ってきます。

 

 乳がんにかかる方は減らせなくても、乳がんでなくす命は救えます。乳がんの術後の後遺症で悩む方は減らせます。そのためには1人でも多くの方に検診を受けていただくことが重要です。勤務先での検診や人間ドック、地域での住民検診など機会を見つけてマンモグラフィ検診を受けるように周りの女性に勧めてあげて下さい。あなたの一声が乳がんで悩む女性を救うことになるのです。

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