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PET検診

掲載月:2007/05

ひょうご経済戦略 2007年5月号


財団法人兵庫県健康財団 保健検診センター副所長 杉村千惠

 

 最近、ペット検診という言葉を見聞きすることが多くなりました。最初のころはペット検診と聞くと、ペットブームで犬や猫まで人間と同じようにドックや検診を受けるようになったのかと変に納得された方が多かったのではないでしょうか。また医療の現場でも、ペット検査を受けましょうとお話しすると怪訝な顔をされましたが、いまではペット検査がPET検査であり、CTやMRIと同じような画像検査であることが知られるようになりました。

 

 PETとは、ポジトロンエミッショントモグラフィー(Positron Emission Tomography)の略です。陽電子を出す放射性物質を投与して、断層画像を撮る検査といえます。陽電子を出す放射性物質は体内に注射するとガンマ線という放射線を放出します。これを特殊なカメラでとらえ,体内の分布を画像化することができ、その分布を分析することにより診断を行います。

 PET検査では使用する放射性物質の違いにより、脳、心臓、がんなどの検査を行うことができます。脳では脳梗塞、アルツハイマー型痴呆を、心臓では心筋梗塞や狭心症、動脈硬化の方などを対象に検査します。

 

 がんを目的として検査するときに使用する薬剤はFDGといわれており、ブドウ糖に類似した物質に、陽電子を出す放射性物質をつけたものです。ブドウ糖は全身のすべての細胞のエネルギー源ですが、特にがん細胞は正常な細胞よりも多くのブドウ糖を消費します。そのためにがん細胞にはFDGも多く集まります。

 

 放出される放射線の量も多くなり、それが画像としてとらえられます。このようにがん細胞の特徴を応用して検査していますので、PETによるがん検査は、がんの悪性度の診断、全身の転移や再発の診断、治療の効果判定などで大変有用です。がんが疑われたときの検査、がんと分かってからの術前検査や病期決定のための検査、治療中や経過観察中の検査としてなくてはならない検査となってきています。

 

 さて、PET検査が行える施設はこの2,3年で急速に増加しています。そして、それらの施設の多くでは、がんの診断だけではなく、通常の人間ドックなどと組み合わせたがん検診としてPET検査を行っています。「絶食をして注射をうち、ベッドで寝ているだけで全身のどんな小さながんでも発見できます」という宣伝文句を見ると料金が高くても受けてみようと思われる方はおられると思います。しかし、他の検査と同じようにPET検診にも利点と欠点があります。

 

 PET検診の最大の利点はやはりがんの発見です。マンモグラフィ検診などのように、たくさんの症例を集めて有効性を評価した研究はまだありませんが、いろいろな施設で症状のない時期にがんを発見でき、早期治療に結びついていることは確かです。一回の検査で全身を検査できることも利点です。

 

 でも欠点もたくさんあります。がんがあっても分かりにくい臓器があります。脳は正常でも細胞の活動が活発でブドウ糖がよく集まるので、脳腫瘍にFDGが集積しても検出できません。また膀胱がんや前立腺がんといった泌尿器系のがんは、FDGが尿から排泄されるために重なってわかりにくいことが多いです。

 

 また、同じがんでも、悪性度が低かったりしてFDGがあまり集まらなかったり、小さすぎて検出できなかったりして、PETだけではがんを見逃す事は稀ではありません。PETを行えば、がんがあれば必ずわかるというのは誤りです。なお、結核などの炎症性の病気でもFDGが集まりますので、集まったから必ずがんだというのも誤りです。

 

 胃がん検診、乳がん検診など他の検診と同じように、PET検診もPETさえ受ければすべてのがんが分かる魔法の検診ではありません。検診を申し込む前に利点、欠点をよく知り、納得して検診を受けられることをお勧めします。

 

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