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運動中のけがの処置

掲載月:2010/09

<運動中のけがの処置>

 

(財)兵庫県健康財団 健康指導部 健康運動指導専門員 山口一仁


 RICE=ライス=米(こめ)、ではありません。RICEとは運動中のアクシデントによる打撲や捻挫、肉離れ等、主に整形外科的なけがの応急処置方法の頭文字をとって表したものです。けがをした直後にRICE処置を適切に施すことで、治癒、回復を早め運動への早期復帰が期待できます。それでは、それぞれの言葉の意味を説明しましょう。

 

R=Rest(レスト)=安静
 私たちのからだは、けがをするとその直後から体内で修復機能が働き、受傷部位の内出血や体液(腫れの原因)を取り除き治癒しようとします。しかし、安静にせずに動きまわっていると多量の血液や体液が受傷部位に流れ込むため、除去に時間がかかり治癒を遅らせてしまいます。また、全身に影響を及ぼし完治を遅らせ、時間と医療費の浪費につながり不経済です。けがをすればできる限り安静にして腫れを抑え早期回復に備えることが大切です。

 

I=Iceing(アイシング)=冷却
 受傷した部位を冷やすことにより、痛みを軽減し、血管を収縮させて内出血や腫れ、炎症を低減します。しかし、冷やし過ぎには注意が必要で、長時間冷却すると血行が滞り凍傷に陥る可能性があります。冷却時間は受傷部位にもよりますが15分から20分間、感覚がなくなるまで冷却し、その後40分から60分間の間隔で冷却を休止します。これを約24時間から48時間繰り返すことが目安です。ただし、就寝中は凍傷予防のため冷却は休止し、圧迫と挙上(後述)だけにします。


 冷却の材料には氷、コールドパック、コールドスプレー、冷湿布薬等が考えられますが、冷却効果、経済性、入手方法、使用の簡便さ等の面から氷をおすすめします。
摂氏0度の氷は融けて液体になる時に、周囲の熱を奪い取る能力(質量あたりの冷却能力)が高く冷却の効率に優れ、他の材料と比較しても受傷部位の表面だけではなく深部まで冷却できます。


 コールドパックは氷より冷たくなり、凍傷に陥る可能性が高くなりますので、使用の際には注意が必要です。なお、氷やコールドパック等の冷却材を使って冷やす場合は、凍傷予防のため直接皮膚に触れないよう、氷嚢などの入れ物やタオル等に包んで冷えすぎないようにしてください。


 コールドスプレーは氷よりも効果、冷却持続時間は劣りますが、一時的に痛みを緩和するのには役立ちます。冷湿布薬は皮膚表面の温度を約2度程度下げる効果はありますが、深部を冷却する能力が低く冷却効果持続時間は2時間から4時間程度です。いずれの材料も長所、短所があります。冷却する時、場所、環境等を考え、それぞれをうまく組み合わせることにより効果的な冷却を行ってください。

 

C=Compression(コンプレッション)=圧迫
 受傷部位に適度な圧迫を加えることで内出血や腫れを抑えます。冷却時も冷却時以外でも圧迫は続けます。圧迫には主に伸縮性のある包帯や専用のサポーター等の圧迫資材を使用しますが、圧迫の加えすぎには十分な注意が必要です。


 包帯またはサポーター等を装着後、指先まで血流があるか確認してください。指先が紫色や蒼白であったり、痺れや痛みが伴う場合は圧迫が強過ぎ(強く巻き過ぎ)です。長時間の強い冷却と強い圧迫、挙上が重なると受傷部位やその周辺が重大な事態に陥る可能性があります。圧迫後、しばらくの間は血行に十分注意してください。

 

E=Elevation(エレベーション)=挙上(きょじょう)
 受傷部位を心臓よりも高い位置に置くことで重力が作用し、内出血や腫れを抑えます。通常、圧迫と併用されます。


 受傷部位の挙上の位置は、安静を保ち長時間でも楽な姿勢を保てる位置が大切です。特に就寝時の挙上は高くなり過ぎないよう注意してください。高過ぎると寝づらく、十分な睡眠と休養が取れなくなり回復を遅らせる要因になります。

 

 最近のスポーツの現場では、RICE処置の前後にP、SをつけてPRICES=プライシスという応急処置の方法を言うこともあります。


 P=Protect(プロテクト)=保護の略で、受傷部位をこれ以上悪くしないように、また、けがをした人を現場から移動する時に、他の部位にまでけがが悪影響を及ぼさないように細心の注意を払うことです。


 S=Support(サポート)=支持の略で、受傷部位やその周辺部位がこれ以上悪化または悪影響を受けないよう、副木や三角巾、テーピング等の資材を用いて受傷部位周辺等を固定し動かないように支持することです。

 

 以上、RICE処置またはPRICES処置を心肺蘇生法、AED同様、普段からシミュレーションしておき、健康づくり運動中にアクシデントが発生した場合には適切に対処できるようにしておいてください。そして、応急処置後は早急にけがをした人を医療機関へ搬送して専門医の指示に従ってください。


 軽い捻挫や打撲等の場合、「医療機関へ行くのは面倒」、「診察や治療に時間がかかる」、「RICE処置をしておけば、すぐに治るだろう」と思い、適切な治療を受けないことがよくあります。これらの個人的な判断は、後々、後遺症となって現れる可能性がありますので、軽いけがと考えずに、是非医療機関で診察を受けてください。

 

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